2.「瑕疵」の有無の判断 建築士との協働が不可欠です!
では、実際に欠陥住宅かどうかをどうやって判断するのでしょうか。
例えば、雨漏りがするなどの欠陥が、法律的に瑕疵といえるものなのかどうかを、一定の基準に照らして判断することになります。
もう少し詳しくいえば、住宅が
①設計図通りに作られているのか(※1)
②法律(※2)に適っているのか
③④ その他、業界団体などが定める様々な基準(※3)に適合するのかを判断します。
※1 設計図書、契約図書、確認図書どおりに施工されているか※2 建築基準法、同法施行令、国土交通省告示等
※3 ③日本建築学会建築工事標準仕様書(JASS)、小規建築物基礎設計の手引き等の基準を満たすか、 ④住宅金融支援機構の住宅工事共通仕様書の基準を満たすか等
このように、住宅の欠陥原因を正確に把握し、それが「瑕疵」にあたるかどうかを判断することは、非常に専門的な問題です。
欠陥住宅問題に対応するためには、高い専門性を有する建築士と協力して,問題解決にあたることが大変重要なのです。
当事務所では、多くの住宅紛争を手がけているベテランの建築士との連携により、あなたの問題解決に向けた質の高いサービスが提供できます。
3.住宅に「瑕疵」があった場合の責任追及
建築の専門家に見てもらって、住宅に「瑕疵」がある(欠陥がある)と判断されたとしても、売主に対して請求可能な責任については、どんな形で住宅を購入(リフォーム)したのか(建売なのか、注文住宅なのか、リフォームなのか)によって、どのような責任追及ができるのかが異なります。
これにより、責任追及できる期間も異なってきますので注意が必要です。
気がついたときには欠陥があるにもかかわらず、時効により責任追及ができなくなってしまった!ということにもなりかねません。
「おかしい?」と感じたら、すぐにご相談ください。
(1)建売住宅(中古含む)を購入した場合
ア 民法上の売主の瑕疵担保責任を追求できます。
購入した住宅に普通の人が注意を払っても発見できないような瑕疵(欠陥)が存在する場合、売主は瑕疵担保責任(かしたんぽせきにん)という責任を負います。
その内容は、損害賠償請求や契約の解除(契約目的を達することができない場合)などです。
これらは瑕疵を発見したときから1年以内に行う必要があり、かつ住宅の引渡し時から10年が経過すると行うことができません。
但し、この民法上の瑕疵担保責任は、当事者間で自由に内容を変更でき、契約書で売主が瑕疵担保責任を負う内容・期間が軽減されていることが一般的なのです。
そこで、売主が売買に精通した宅建業者である場合には、買主保護のため、宅建業法では、売主は少なくとも住宅の引渡し時から2年間は瑕疵担保責任を負うように定められています。
しかし、引渡し時から2年間というのは、民法上の瑕疵担保責任が瑕疵を発見したときから1年以内は責任追及可能であることに比べると、買主にとってやはり不利な内容であり、民法の原則よりも買主の責任追及が制限されていることには変わりがありません。
なお、平成12年4月1日以降の契約においては、特別法である「住宅の品質確保の促進等に関する法律」(以下「品確法」といいます。)により、住宅の引渡し時から10年以内であれば、同法に基づき、損害賠償請求、及び契約の解除をすることができるようになりました。
但し、①住宅が新築であって、②「瑕疵」が基本構造部分(柱や梁など住宅の構造耐力上主要な部分、雨水の浸入を防止する部分)に存する場合に限られます。
イ 瑕疵修補(かししゅうほ)請求ができます。
契約書に瑕疵修補請求ができるとの条項がある場合には、買主は、この契約上の権利として、売主に対して住宅の修補請求をすることができます。
なお、平成12年4月1日以降の契約においては、品確法に基づき、新築住宅であって、かつ瑕疵が基本構造部分に存する場合には、引渡し時から10年以内であれば、売主に対する瑕疵修補請求ができます。
(2)注文住宅の場合
ア 民法上の「請負人の瑕疵担保責任」を追求できます。
注文住宅の場合は、建売住宅のような売買ではなく、ある仕事(ここでは、住宅の建築です。)を完成させることに対して報酬を支払うものなので、請負(うけおい)という契約類型になります。
そのため、担保責任も、売買の担保責任ではなく請負の担保責任ということになるのです。
請負人の瑕疵担保責任においては、売買とは異なり、瑕疵が「隠れた」ものである必要はありません。損害賠償請求、瑕疵修補請求が可能です。
なお条文上、住宅完成後は契約の解除ができないような定め方がされていますが、少なくとも建替えが相当であるような重大な瑕疵が存在する場合には、住宅完成後の契約解除も認められるとの解釈が一般的です。
請負人の瑕疵担保責任も、原則として引渡し時から1年間という期間設定がされていますが、住宅に関しては、瑕疵が一般に重大な影響を及ぼすこと等を考慮し、引渡し時から5年以内、住宅が石造、土造、れんが造、コンクリート造、金属造その他これらに類する構造物である場合には、引渡し時から10年以内となっています。
また、新築請負契約であって、「瑕疵」が基本構造部分に存する場合には、品確法の適用があります。
(3)リフォーム工事の場合 短い責任追及期間に要注意!
リフォーム工事も、法律上は請負契約に分類されます。
そのため、その責任追及については、概ね上記(2)と同様です。
しかし、品確法は増改築等には適用されないこと、及び民法上の請負人の瑕疵担保責任の5年ないしは10年という責任期間についても、小規模なリフォームのばあいは、この長期の責任期間の規定が適用されず、原則である1年間が責任期間となる可能性があります。
そのため、リフォーム工事で欠陥があった場合は、直ちにアクションを起こすことが非常に重要なのです。
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(4)その他の責任追及方法 不法行為責任の追及
これまで述べてきたように、契約類型によって追求できる責任内容が異なり、とりわけ責任追及できる期間に限りがあります。
ところで、最高裁平成19年7月6日判決によれば、住宅としての「基本的な安全性を損なう瑕疵があり、それにより居住者等の生命、身体又は財産が侵害された場合」には、特段の事情がない限り、不法行為責任が生ずると判断しています。
不法行為責任は、損害と相手方を知ってから3年以内であれば追求可能ですから、引渡し時から10年以上が経過してから瑕疵に気がついたとしても、上記最高裁判決の言及する要件に該当していれば、責任追及が可能である場合もあります。
4.これまでのまとめ ――― 早期のご相談を!
①「欠陥原因」を把握して「瑕疵」の有無を判断し(建築関係の専門性)、
②制限期間内に適切な相手方に責任追及をする(法律関係の専門性)ためには、各段階で早期の専門的な対応を要します。
そのため、欠陥住宅かな?と思った場合には、すぐに専門家にご相談することをお勧めします。
当事務所は、建築士をはじめとする建築関係の各種専門家との密な連携がありますので、お困りのトラブルに、迅速かつ適切に対処させていただくことが可能です。
まずはお気軽にご相談下さい。